古びない素材としての煉瓦

私たちのデザインパートナーであるmatt鈴木が東京でプロデュースしたThe Wallの外壁ディテール・・・仕上げ材の煉瓦を積み上げたのはフィレンツェで54代続く本場の煉瓦職人チーム。

躯体壁に這わせたステンレスのワイヤーに、レンガを特注の留め金具で一つずつ丁寧に固定しながら積み上げていった。地震の多い環境を考慮した乾式組積工法である。また特徴的なのはレンガ層と石層部を交互に積み上げる古代ローマ特有の”Roman Wall”をそのまま再現。ポストモダンの鋳鉄と古代煉瓦壁の組み合わせが他の近代建築にはない特有の温もりをあたえています。


煉瓦という素材は、日本人にとって常に西欧のイメージを伝えるある意味憧れの材料でした。 煉瓦は土を焼き固めて作る材料で、人の手で作られた世界最古の建設素材のひとつです。 古くは古代メソポタミア文明を始め、大陸の広い範囲で使われていた材料で、世界には何千年も前の煉瓦建造物が今でも存在しています。むしろ木が建築材料の中心であった日本の方が、特異な存在といってもよいくらいです。

日本においては黒船来航後、西洋文明の流入と連動して文明開化の象徴として導入されました。明治時代、銀座の復活劇の立役者として衝撃的なインパクトを与えた煉瓦街など・・西欧化の象徴として、また江戸の大火の教訓として政府が推奨した優れた耐火材として煉瓦は明治初頭から全国に広まりました。

しかし、濃尾地震や、明治三陸沖地震など明治時代の震災、そして大正期の関東大震災で、煉瓦造の建物が数多く倒壊したことにより、煉瓦造の建物の耐震性の弱さが浮き彫りになり、次第にRC造の建物に入れ替わっていきます。今やこの新素材RC造の耐震構造に関しては、日本は世界最先端の技術を誇っています。

しかし、煉瓦はその後、別の魅力を日本でも発揮するようになります。それは、アルミニウムやプラスチックにはない、古びない素材としての魅力です。横浜の赤レンガ倉庫の再生など、その古びない記憶を利用し活かした建物が近年日本にもまた徐々に増えつつあります。


T邸、外壁のグリッドに上海の築100年以上の廃工場に使われていた煉瓦を数量限定で安く購入して貼りました。100年前の素材が海を越え住宅の外装となったのです。その古い煉瓦がコンクリート打ち放しとうまく共存し、外観に重厚な温もりと風化しても味わいの出るノスタルジックな魅力をあたえています。


RC打ち放しは魅力ある仕上げ材ですが、時間が経つにつれ汚れることは否めず、定期的なメンテナンスが必要となります。 (RCZ工法による打ち放しは、通常の打ち放しに比べ仕上げが滑らかなため、通常より汚れづらいとはいえ…)

それに対し、煉瓦は時間が経てばたつほどその魅力を増し、目地の汚れすら味になります。また、煉瓦で外壁を覆うことで主体構造であるRC面を被覆=保護するだけでなく、断熱効果を格段に高めることにも繋がります。 古代ローマの時代から、煉瓦は長い歴史に耐えてきました。長く使う住宅の素材として最初の選択肢になる貴重な建築素材だと私たちは考えています。


上は私たちが二子玉川で設計した商業施設 STREAM Tamagawaの外装です。メインの外壁に煉瓦を使用しました。この地域にない素材感とデザインが商業施設としての存在感を持続し、長期に渡り親しまれる存在になってゆくことを願っています。

日本の建物の大半は建ったばかりの時が一番美しい!!・・しかし新しいテクノロジーと共に近代化する建築文化の中で果たしてそれが正しい方向性なのか?・・ 時を経て味を増し、美しさを加えてゆく建造物を予算が許す範囲でいかに考案するか?・・これが私たちの建築におけるテーマです。

次の世代に大切な資産として受け継がれ、愛着と存在感を増してゆく建物が今も社会的に見て一番の理想だと私たちは考えています。


 

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