UR集合住宅歴史館訪問

K&Factoryのページに、先日訪問したUR集合住宅歴史館についての記事をアップしています。貴重な模型や、現物の移設など、日本の住宅の歴史が手に取るような展示内容です。ご興味のある方は是非。

UR集合住宅歴史館訪問その1-同潤会アパート

UR集合住宅歴史館訪問その2-晴海高層アパート

UR集合住宅歴史館訪問その3-戦後最初期のシステムキッチン

前川國男の外装/上野公園の建築3題

弘前市にある前川国男設計の建築「木村産業会館」について、また、仕上げ材としての煉瓦についてふれたこときっかけに、上野にある、時期を経て建てられた前川國男設計の建築3題(国立西洋美術館、東京文化会館、東京都美術館)について書きたくなった。主に外装の仕上げ材を中心に、経年変化に耐える建築としての視点からである。いずれの建物も上野公園内にあり歩いて数分、散歩で日本の近代建築の流れが体験できます。


国立西洋美術館 1959年竣工

まずは、国立西洋近代美術館から、これは正確に言うと、ル・コルビジェ基本設計、それを彼の弟子である前川國男、坂倉順三、吉阪隆正の3人がサポートして設計した建物である。

コルビジェが日本に来たのは一回、さらに送ってきた図面は数枚、よって基本的なデザインはコルビジェのものとしても、かなりの部分は前述した3人によって設計された。外装はPCパネル。高知桂浜の小石を埋め込んだものだったそうだが、剥離が激しく、結局やり替え、今はフィリピン産の小石が打ち込まれたものになっている。階段や吹抜けのデザインなど、コルビジェらしい部分も随所にみられるが、やはり私がフランスで見た、彼の設計のラ・トウーレット、ロンシャンの教会のような強烈な造形性、ものの迫力はない。PC外壁でも見られるとおり、妙にこぎれいな洗練された外装仕上げがそう思わせる原因のひとつだと思われる。ロンシャンの教会など、仕上げは荒っぽいがその荒々しさがコルビジェの造形性をきわだたせている。


東京文化会館 1961年竣工

一方、こちらは東京文化会館、前川國男の代表作といったらこれになるだろう。コンクリート打ち放しの迫力あるデザイン。なぜ、この表現が選択されたか、前川自身の興味深い発言がある。

「もともと打ち放しというのは、ぼくらがレーモンド事務所にいたときに始めたんです。(中略)レーモンドとも相談しましてね、日本の建築はタイルか石でフィニッシュするので、どうも良くないというのですよ。良くないのはタイルというのはだんご張りしてつけるだけでしょう。ついたところで弱いモルタルで目地をやるようなことですから、そこから水が入るんですよね。吹き降りのときはひどい。中に入っているのがどうしてわかるかというと、いろいろなところでエフロレッセンスがでてくるでしょう。それでいろいろ議論したところ、いっそ打ち放しでやったらどうだということになったのです。」(座談会「打ち込みタイルと美術館」新建築1980年1月号より)

当時の日本では、タイルを貼ったとしても貧弱な技術と経験ゆえ、剥離や目地の汚れなどがすぐ発生して、仕上げ材や保護剤としての効果が出なかった。よっていっそのこと打ち放しで、、、という過程がよくわかる。

しかしこれも経年変化によって汚れが目立つようになる。前川自身がこう述べている。

「戦後むやみに打ち放しをつくったものですが、これがどうも汚れっぷりがよくないわけです。(中略)それじゃあ何でやるかというと焼き物しかないんじゃないか。」(座談会「打ち込みタイルと美術館」新建築1980年1月号より)


東京都美術館 1975年竣工

1960年代後半になると、以上のような経緯から、前川國男はコンクリートに型枠に先止めした足のあるタイルを貼り打ち込む「打ち込みタイル工法」を開発し展開していく。これは高温多湿、雨や台風の多い日本の環境に合った仕上げだった。東京都美術館は打ち込みタイルを全面的に使った建築で、いまもその質感のある外観が上野の森の緑と調和した姿を見せている。


上野の前川國男設計の建物を見るだけでも、日本の建築の仕上げ材の考え方がよくわかる。そして、それは住宅の仕上げデザインにも参考になると思います。

※今回の文章は「近代建築を記憶する」松隈洋著 建築思潮研究室刊を参考にしました。


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