アートの器としての住宅

T邸の施主もアートコレクター。アートが問題なく保管されている。写真はリビングにかかるアーティスト「国民投票」の作品。トップライトから壁に光を当てている。


私たちのデザインパートナーであるmatt鈴木が、RCZ住宅に注目したたのは、もうひとつの彼の専門である現代アートの保管がきっかけでした。

もともとアメリカに住んでいたこともあり、日本の住宅の断熱性の低さ、何より木造住宅の壁の薄さを痛感していました。そして、欧米に比べて高温多湿な日本の環境は、アートにとっても過酷な環境といえます。
また、現代アートはこれまでに比べてもさまざまな素材や、電気などのシステムを使うものもあり、その保存はますます細心の注意が必要なものとなっています。

最近もある住宅にアートを納入しようとしましたが、その住宅が結露でトラブルを起こしているため、納入できなくなったという事例がありました。
人間に対しててだけでなく、アートにとって、カビや痛みの原因となる結露は大敵です。保管に気を使わず、しばらくして気がついたら高額で購入したお気に入りのアートが痛んでいた、裏側にカビが生えた、などの例は枚挙にいとまがないほどです。

RCZ工法は、これまでいろいろ述べたとおり、結露を起こしづらいシステムです。
また、コンクリートということあり、セキュリティ上も安心感があります。mattはそこに注目し、RCZ工法を自分のアートコレクターが住宅を建てる時に工法として勧めるようになりました。
そして、その結果、これまでいくつか建てた中でアートを置いた実績としても、結露などの問題がなく、アートの保管に有効だということが証明されています。

RCZ工法による住宅は、人間にやさしいだけでなく、アートの器として極めて有効なものでもあるのです。

コンクリートの美学→ルイス カーンから安藤忠雄へ

ルイス カーン設計のキンベル美術館。ウォールトの頂点にスリットが入り、上から光が差し込まれて反射板によりコンクリート仕上げの天井を照らす。後に安藤忠雄がコンペを勝ち抜き、隣地にフォートワース美術館を設計する。


 

RC住宅の歴史の項でも述べたとおり、鉄筋コンクリートの歴史は意外と浅く、発明されたのは19世紀半ば、実際には20世紀に近代建築とともに広まった技術です。その自由な造形性と、人口増加や世界大戦による住宅不足に対応する技術として、コンクリートは世界中で使われる技術となりました。

最初は技術として広まったコンクリートですが、やがてそれを素材として積極的に美学として生かそうという流れが生まれます。その最初はブルータリズムという、イギリスを中心に起こった潮流です。タイルや塗装などをせずに、コンクリートをむき出しのまま使い、その荒々しい肌ざわりを生かした建築で、彫塑的な迫力を建築にもたらします。その影響は日本にも及び、今でも東京で見られるものとしては、たとえば前川國男設計の東京文化会館などがそれにあたります。

コンクリート打設の技術が向上し、表面を保護する保護材なども発達、滑らかな表面仕上げのコンクリートが打てるようになります。その代表的作品がルイス カーン設計のキンベル美術館でした。
ルイス カーンは1960年代にアメリカで活躍した建築家で、この美術館は晩年の傑作です。滑らかなコンクリートの壁と、その上に乗る連続したウォールト屋根が特徴で、多くの建築家が影響を受けました。その代表が日本の建築家安藤忠雄です。
彼の影響を受けて、作られた安藤設計の初期の小住宅群、その中のひとつ「住吉の長屋」が、日本のコンクリート住宅デザインの流れを決定づけます。この影響は、21世紀になった今でも続いています。ただし、断熱など、それ以降に浮上した省エネルギーの流れもあり、コンクリートの使い方も変わってきました。安藤忠雄も、最近のものは屋上緑化を施すなど、断熱性能を考慮してデザインしています。
コンクリートは、通常ベニヤの型枠によって成形されます、それに対してRCZシステムは、システム型枠のため、滑らかなコンクリートを打つことができます。これが生まれるまでには、先人たちの長い技術の蓄積と、美学の追求があったのです。


住吉の長屋、中庭を挟んで部屋が対峙し、雨天時は傘をさしてトイレに行かなければならないプランは一般人でも知っているくらい有名。当時この建物を見学した重鎮の建築家が、設計者より住んでいる施主が偉いと言ったとか、後に安藤自身がそろそろ中庭に屋根をかけたらと施主に進めたところ、何をいまさらと一蹴されたとか、ここまでくると伝説的なエピソード多数。


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