北欧の木造住宅断熱デザイン

日本の住宅の断熱基準に比べて、ヨーロッパ諸国、特にドイツ、イギリス、北欧諸国などは、厳しい断熱基準を設けていることはこのホームページでも何回も述べています。それは木造住宅でも変わらなく、グラスウールやロックウールによる断熱層だけで30センチから40センチになるものが一般的です。現在の日本の基準で、一般的に断熱材の厚さが10センチ、北海道でも15センチというのに比べて倍以上の厚さになります。

これだけ厚い断熱層を必要とする基準のため、施工方法はまず日本に見られる2×4に似た木の構造体、具体的には45mm×195mmの縦枠下地の中に、断熱材を入れるだけでなく、建物の外側、内側にも入れます。いわば、躯体断熱、内断熱、外断熱のセットになっているのです。三重の断熱システムで、外断熱もあるため、躯体が守られることにもなります。日本の木造住宅が保たない原因のひとつが、木構造の結露による痛みですが、これが外断熱という形で防げることで、木造住宅でも寿命を伸ばすことができます。また、サッシュも単にペアガラスというだけでなく、二重、三重のサッシュで、木造サッシュも多く取り入れられています。

上で述べたように、二重、三重の断熱に守られた家は、わずかな暖房だけでも、冬でも全室が暖かいです。よって、ヒートショックが起こりにくい家になります。寒い冬でも暖かい北欧のくらしは、寒さを我慢して結局からだを傷めている日本人とは対照的です。 私たちは、木造住宅は寒いものだという常識を捨てるべきでしょう。ヒートショックに関しては、実は寒い東日本より西日本の方が多いという統計報告もあります。断熱が比較的なされている北海道、北陸などの寒冷地、豪雪地帯だけでなく、西日本を中心に住宅の断熱基準を見直すべきだと思います。


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ベルリン・名作集合住宅の断熱リノベーション

ブルーノ タウトの研究家でもある、田中辰明先生つながりで書くのだけれど、先生のエッセイでも紹介された通りオンケルトムズヒュッテの住宅団地など、ブルーノ タウトが設計したベルリンの4つの集合住宅が2008年に世界文化遺産に登録された。また、近年外壁に外断熱を施すことなど、大規模な改修もなされ、今のスペックにあわせて蘇った。表現主義建築の時代から、第一次大戦を経て、アンビルドの時代から1920年代の後半、一気に12000戸の集合住宅をタウトは設計した。竣工から100年近く経って、文化的価値とともに、性能を向上させて建物を使用する。建築のストックとしての意識の違いを感じさせる。

たとえばこの河内秀子さんのような、現地在住のライターの方のこのようなレポートを読むと、タウトのような建築家がデザインした集合住宅が、今もベルリン市民に高い支持を受けているのがわかる。当時のデザインをカラーリングをふくめて再現している(なんと当時塗料を提供していたメーカーに協力させたとのこと)。今も住むところとして人気があるだけでなく、観光客やデザイン関係者などが実際泊まれるというのが素晴らしい。日本も小林信彦が書くように、たとえば同潤会アパートを全部とは言わないが、ひとつくらい残しておけば良かったのにねえ。

田中辰明先生宅ご訪問

K&Factory一級建築士事務所のブログに、日本の外断熱工法についての第一人者である田中辰明先生宅ご訪問の記事を上げています。ご自身の住宅が、築37年の日本の最初期の外断熱住宅です。日本の外断熱についての受容経緯など、様々なお話をお聞きしています、ご興味ある方はぜひお読み下さい。

ヨーロッパの断熱建築デザイン その2 ドイツ編①

上の写真は一般住宅の窓の収まり。ドイツの断熱基準に合わせ、20センチの断熱材が外壁に貼られている。通常日本の3倍の厚さ!


続けて、環境都市で有名なドイツ、フライブルグ市の環境化の一環として、郊外の普通の住宅の様子をみたい。こちらも現地の、日本人ガイドさんに案内してもらうことができた。

フライブルグ市の環境都市化の歴史は古く、チェルノブイリ原発のショックで市民の意識が一変した。この街はフランスからそれまで電気を買っていたが、その電気は原子力によって作られたものだったため、いかにそれから脱却するかが住民共通の課題となった。

早くからソーラーパネルなどのエネルギー施策を取りいれただけでなく、環境系企業の誘致、車を市内に入れず、公共交通に乗り換えるパークアンドライドなど、交通システムの実験も行い、さまさまな形の環境政策を打ち出し、ドイツ、ヨーロッパの環境首都とも呼ばれている。


こちらは中心市街地にある環境情報センター。海外からの視察客も多く、普及啓発に熱心。


視察ではいろいろ見せてもらったのだが、今回はドイツの進んだ断熱基準に基づく郊外の住宅地のルポということで。

ドイツ郊外の住宅地、構造は木造、サンルームなどの外屋がくっついている。カラーリングがカラフルです。各家の壁はブログトップの写真でもわかるように、木造の上に外断熱で分厚い断熱材を貼っている。

サンルームの収まり、これが建物の蓄熱に大きな役割を果たしている。太陽光で部屋を暖ためるのは古くからある手法。断熱がしっかりしているので、昼の光で床に蓄熱した熱が逃げない。

これが面白い。ドイツの道路の側溝、隠蔽せずオープンな形で雨水を処理する。ドイツに行って驚いたのは、住宅地など舗装されていないこと、雨水は自然浸透させる。ドイツも一時期までは舗装が進んでいたが、その後舗装を剥がす方向へ。水たまりがあってもそれで良いとい考え方。逆に言えば、日本はあらゆるところが舗装されすぎているというべきか。

こんな感じで、各家庭が思いおもいに自分の家の前の家づくりを楽しんでいる。外屋などはDIYがほとんどとのこと。

郊外住宅地を30分ほど散歩したが、日本との住宅や街の作り方の違いに驚いた。何でもみてみないとわからないものである。


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ちょっと前に行ったスイス、チューリッヒの建築から、かの国の断熱事情を考察してみる。

このときはチューリッヒ在住の現地の建築家の方に案内して頂いた。そのおかげで効率的にいろいろな場所をまわることができた。これはそのうちのひとつ、チューリッヒ市街の中心部にある集合住宅である。設計はギゴン&ゴヤー、ヘルツオークのお弟子さんの建築ユニット。色使いに特徴がある。毎回カラーコーディネーター、というより色のアーティストを入れて建築をつくっている。

全体の構成は中庭をはさんで建築が向かい合っているのだが、高低差を上手く利用して空間を分節しているのは前に書いた土浦邸と同じ(規模は全然違うが、、、)何よりも特筆すべきはその壁の厚さ!

このサッシュの影を見ただけでも壁の厚さがわかろうというもの。40cmはあるのではないか?スイスは日本よりはるかに寒い気候環境のため、世界でもっとも厳しい断熱基準をもっている。それをクリアしないと建築が建てられないのだ。壁の厚さは耐震性ではなく、断熱基準で決まるのである。

サッシュのディテール、これも日本の標準的なサッシュに比べるとはるかにゴツい。ガラスも当然ペアガラスで反射をみてもぶあついのがわかる。

深い味わいのあるカラーリングにあわせ、躯体を大きく分節し、窓を大きくとって、迫力あるプロポーションにしている。日本建築にはみられない重厚さ。だがそれのある部分は、スイスの厳しい気候環境と、建築基準によるものだ。この日は2月で耳が鳴りそうに寒い日でした。


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