資産としての住宅についての対話/不動産業を営む永冨さんと

資産としての住宅の位置付けについて、東京で不動産業を営む永冨貴之さんと対話しました。人口減少社会と言われている中、子供たちに渡せる資産としての住宅のあり方について話しています。


古宇田(以下「古」)
子供世代に渡せる住宅をテーマに少し話してみたいと思います。
前提条件として、まず国が定める減価償却資産の耐用年数期間があります。

  • 木造 22年
  • 鉄骨造 19年〜34年
  • RC造 47年

このあたりを手がかりり資産としての住宅について話してみましょうか。まず、不動産業を営む永冨さんからみて、RC住宅の良さはどこにあるのでしょうか?
永冨(以下「永」)
RC住宅の良さはその耐震性と耐火性能にあります。建物は木造に比べて長持ちします。一方で木造住宅の良さは建て替えしやすいところです。時代や使い勝手に合って変えていくことができます。
古;この20年スマホやネットなど、大きく生活は変わりました。しかし住まい方がそんなに変わったでしょうか。ヨーロッパは今でも100年以上前に建てられた住宅を、その雰囲気の良さを生かして住んでいます。時代に合わせて変える必要があるのは設備だけです。
永;今も都心部を中心にマンションは売れています。東京オリンピック以降は下がると言われていましたがわかりません。ゼロ金利政策の中で、お金の行方がなかなかないアベノミクスの影響もあるのかもしれませんが。

高層マンションの問題点

超高層マンションもたくさん立っていますが、これらがこれからどうなるか疑問です。解体したくても解体費もべらぼうに高い。高層棟の維持管理費だけでも大変な金額です。
古;高層マンションは関わる人数も多く、管理組合をまとめるのも大変です。これから人口減少社会となる中、多摩ニュータウンのように高齢化で住宅が歯抜になり、維持管理もままならない民間マンションがたくさん出てくると思います。また、震災のとき、高層マンションの生活維持が大問題となりました、水を持って30階に上がるなど、高齢者には難しいです。
永;低層のマンションはその点管理コストも安くつきますし、管理区分もやりやすいですからね。非常時にも対応しやすいし、本当はエレベーターのない高さ(3階以下)の集合住宅が理想です。ヴィンテージマンションといわれるものにはそのような接地型が多いです。


大倉山ヒルタウン、東急東横線大倉山駅から歩いて数分のところに建つヴィンテージマンションの代表格。低層の集合住宅で、築40年以上で今も緑に溢れています。大倉山エリアの価値を押し上げたマンション。


古;私は近年まちづくりを手がけていますが、そこでの最大の問題は少子高齢化と、それに伴う人口減少です。都心部の人口は今後も減りませんが、それをとりまくドーナツ状の部分は劇的に人口は減少します。そのような社会の中で、個人住宅は個人で所有するため、時代の変化に個人の決断で対応することができます。RCZ住宅であれば、子供だけでなく、孫の世代まで資産として通用します。お金ではない、永続性のある資産です。そんな意識をベースに、今までのように建て替えを前提とした個人住宅から、ストックとしての個人住宅を増やしていきたいのが私の願いです。
永;マンションは大分良くなりましたが、個人住宅は持続性という意味ではまだまだですね。高断熱のRCZ住宅は、そういう意味でもタイムリーなのではありませんか?
古;おっしゃる通りです。日本の個人住宅の基本性能を上げる必要があります。RCZ住宅では、その他、内部の間仕切りは乾式にするなど壊しやすくして、リフォームしやすいように作りたいとも思っています。次の使い手に合わせて変えやすいフレキシブルなデザインは、転売もしやすくなります。個人住宅がストックになれば、社会共有の財産にもなるのです。


T邸の1階平面図、躯体は最小限に抑えて、間仕切りは乾式で作っている。家族構成の変化に合わせて変えられるような設計。外部のシェルターはがっちりつくり、内部はフレキシブルにと、リフォームしやすいことを意図しています。


土地と建築/住宅

古;都心部の土地事情ですが、新築したくても23区内の良い土地は出てきません。
永;土地があったとしても高く、投資マンションの用地としてはなかなか成立しません、個人住宅で多少高くても納得して手に入れるならば、土地はありますよ。
これはRC造とは違うのですが、都内には道路づけ条件が悪く、新築できない住宅がたくさんあります。空き家も増えています、そういった場を生かす改修デザインの可能性もあります。
古;RC住宅は地盤が良くないと成立しないところもあるので、地盤の条件や、いま永冨さんが話したような新築不可の建物をどう生かすかも建築家としての課題でしょうね。
永;RCZ工法は、マンション設計にも向いていますよね。
古;壁構造のため、高層はできませんが、低層であれば、もっとも向いているシステムともいえます。これから低層の良いデザインの集合住宅を作っていこうと考えています。
永;低層マンションは高齢化社会にも向いていますね。東京のちょっと郊外など、これから土地利用を考えている方にはちょうど良い考え方ですね。
古;サービス付き高齢者住宅や、老人介護施設など、私たちの設計の経験も活かせそうです。


私たちが設計した、特別養護老人ホーム水彩館、バリアフリーなど、高齢者施設のノウハウは、これからの個人住宅にも生きてくると思います。


永;全国的にも、土地が上がっているところもあります。博多もマンションが売れているし、京都も高級な案件が次々決まっています。また、ニセコなども、オーストラリアや中国の方が土地を手に入れています。ですが、博多も京都も日本のコアな土地です。変動する場所とそうでない場所を見極めることが重要です。
古;そんな中で、RC住宅をつくることは、子供たちの世代に手渡すことが可能です。きちんと手入れすれば100年持ちます。資産としても価値があるし、メンテナンスコストも木造に比べてはるかに安いです。変わっていく時代と、変わらないもの、住宅と不動産は切れないものです。価値のあるものを作って、次世代に渡していくことが私たちの仕事です。


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