その5 ヨーロッパの断熱と冷暖房事情

ドイツの木造住宅の外壁、窓枠の抱きが大きい。断熱材が20センチ以上張られている。


上の写真を見て下さい。これは当事務所で設計した幼稚園に導入した輻射冷暖房システムです。ヨーロッパの幼稚園を参考に導入しました。ルーバー状になっている部分が実はパイプになっていて、ここに冷温水を通すことで、夏は冷房、冬は暖房に使います。エアコンと違い直接体をあたためるので、ドラフトがなく、写真のように戸を開放していても輻射によりあたたかさ、すずしさを感じます。ヨーロッパでは写真のようなセントラルヒーティングが19世紀から発達していました。(この建物が竣工した後、様子を聞くと子どもたちからも保母さんからも大変好評でした)

それに加えて、ヨーロッパの住宅は、前にも述べたとおり、断熱に早くから気を配っていました。戦前からすでに、ドイツなどの集合住宅は、断熱材を外に貼りつけ、建物をすっぽりとくるむ、外断熱という形式を多く利用しています。断熱効果を高めることにより、設備機器のエネルギー使用量を小さくし、省エネルギー効果を高めています。設備機器のスペックアップや、太陽光発電などの新エネルギーの導入の前に、まず断熱効果を高める、建築そのもののスペックを高めることが必須条件なのです。

日本では、生活している場所だけ温めるのが普通です、風呂場やWCは通常暖房がありません、しかし、そのために高齢者を中心にヒートショックという現象が起こり、その温度差のために命を落とすことが増えています。欧米では、建物全体をセントラルヒーティングなどで温めるのが普通です。一見不合理に見えますが、断熱効果を高めることにより、エネルギー使用量を減らし、快適な屋内環境と省エネルギーを両立させるようになりました。

一説によると、日本の住宅とヨーロッパの住宅では、何も空調しなかった場合、室内気温が10度近い差が結果として出るとの話もあります。いままで日本人はすまいの熱環境に興味がありませんでしたが、このような温度差が日本での疾患の原因になっていることは間違いありません。


ヒートショック、冬場、寝具から出た時の温度差(20℃!)、さらに廊下、WCと温度が下がっていく。身体に悪影響を与える。

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